2.1 概要(Overviewの和訳)
Overviewの和訳(意訳)です。(2012年11月現在)
視覚心理物理学の研究においてコンピューターを利用するメリットは、刺激を自由に作り出せることです。
かつての実験プログラムは、正確に刺激を呈示するためにC言語やパスカル言語のような低級言語で作られていました。これらの低級言語を使うことで様々なプログラムを作成することができましたが、簡単にプログラムを作成できるわけではありませんでした。
一方で、BASIC, LISP, Mathematica, や Matlab のようなインタープリター型言語を使うと、ハードウェアに関する細かな設定を気にせずに気軽にプログラムを作ることができますが、正確に刺激を呈示するのには不向きでした。
PTBをMatlabもしくはOctaveから利用することで、手軽に、かつ正確な刺激の呈示を行うことが可能です。
(以下の文章でMatlabと書かれている箇所は、大部分においてOctaveにも当てはまります)
Matlabは高級インタープリター型言語のひとつで、様々な数値計算を行うことができます。PTBは、Matlabとコンピューターハードウェアとの橋渡し(interfaces)になるものです。
PTBは次のようなことを可能にします。
- 画像情報が保管されている場所(the display frame buffer)や色情報(color lookup table)の操作。
- 垂直帰線との同期(画面のちらつきを抑える)
- ミリセカンド(ms)の時間解像度
- OpenGLコマンドでの操作
- 刺激観察者の反応の取得
- color space transformations
- QUESTを用いた閾値の測定
Matlab上で動くPTBは、柔軟性があり、簡単に学習ができます。
決まり切った実験プログラムだけでは新しい実験を行うことができません。そのためには、C言語やMatlabのような熟練されたコンピューター言語の表現豊かな余地(the expressive scope)が必要です。
特にMatlabは、研究室での実験プログラムを動かすのに適した言語です。すでにプログラミングの知識を持っているひとにとっても、以下に挙げるMatlabの三つの特徴によって、他の言語よりも効率よくプログラムを作成することができるでしょう。
- Matlabは数学やプロット(グラフを書いたり)にまつわる高機能な関数を有しています。
- Matlabは配列(arrays)および画像を変数によって操作できます。
- Matlabは対話式(interactive)であり、例えば1+1と入力することで即座に2という答えを得ることができます。
プログラミングの経験がない人たちは、次の3点を学習することに気がつくでしょう。
- Matlab
- 刺激の作り方、反応のはかり方
- 実験の組立方
これら3つのトピックスのあいだで、重複はありません。
同梱されているデモプログラムを見ていただくと、どれくらいの共通タスクが達成されているか分かるでしょう。(help PsychDemos をご覧ください)
言語を学習するために、多くの人はMatlabのマニュアルを読もうとするでしょう。その一方でマニュアルをスキップして試行錯誤で学習していく人もいます。いずれにせよすべての人が、頻繁にMatlabのヘルプを使います。このヘルプはMatlabのすばらしい特徴のひとつで、私たちもその慣習に従うよう努めました。
PTBは人気があります。
2006年10月現在で、PTB2は30000回(Windows版が24,324回、Mac OS9版が8,743回)ダウンロードされました。PTB3については、Mac OSX版が2006年9月までに1,832回ダウンロードされています。現在のダウンロード状況はOverviewの下部で確認できます。
PTBのフォーラムには1500人のメンバーがおり、1日につき4メッセージ程度がやりとりされています。
ある調査によれば、少なくとも127件の助成を受けたプロジェクトで使われています。
また私たちが確認できたもので404件の引用、Google scholarによれば3,200件の引用が確認されています。
PTB3の新しい特徴、PTB2との違いについて興味のあるかたは以下のリンクをクリックしてください。
Talk slides of Psychtoolbox presentation, given at ECVP 2007 Arezzo
Mario Kleiner, David Brainard, Denis Pelli, Chris Broussard, Tobias Wolf, Diederick Niehorster